今週のお題:衣装
衣装ということですが、今回は「白装束」について書きたいと思います。
<白装束とは>
広義では白い衣服のこと。白い着物。また、神事で神主さんや巫女さん、修験者さんが着用している単衣も含まれます。
突然ですが、この白装束・白い着物、幽霊画や雪女の絵などでもよくみかけますね。
いくつかご紹介したいと思います。
一つ目は「雪女」です。
雪女の起源は室町時代末期にまで遡ります。
連歌師宗祇の『宗祇諸国物語』には越後で美しい雪女を目撃された話が収録されています。
雪女はたいてい「死」を思わせるような白装束を身にまとい、山中で会った人に凍てつく息を吹きかけて殺したりします。そのため、山中で行き倒れた女性の幽霊や雪の精とみなされています。
上記の雪女は江戸時代の画家・佐脇嵩之(さわきすうし)の『百怪図巻』より。
着物のあわせは左前ではありませんが、死装束を彷彿とさせる純白の着物のため、雪女=雪山での死者という説があります。
ちなみに、現在、知られるような悲恋物語のヒロインに雪女がなったのは明治時代に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が各地に伝わる伝承をベースに書いた「雪おんな」(『怪談』収録)によるところが大きいと思われます。
悲恋物語で有名になった雪女さんですが、別名が雪娘・雪女(ゆきおなご)とも言い、その生息地は東日本と山陰地方です。
会えるとしたら真冬の雪山が遭遇率が高いです。でも危険です。
次に「船幽霊」です。
船幽霊は水難事故の犠牲者が怨霊となったものとされ、日本各地に多くの伝承が残っています。
彼らは海上で出会った生者を自分たちの仲間に引き入れようと、柄杓で海水を船に入れて沈没させようとするといいます。
上記の船幽霊は桃山人(とうさんじん)筆、江戸時代の浮世絵師・竹原春泉(たけはらしゅんせい)の『絵本百物語』より。
船幽霊は一定の条件下で遭遇すると考えられています。例えば、お盆や大晦日などです。古来、お盆や大晦日に海に出ることは禁忌とされ、それを破ったときに船幽霊が出現すると信じられてきました。
ちなみに、1841年(天保12)年発行の『絵本百物語』では、船幽霊は壇ノ浦で滅亡した平家一門の亡霊とされています。実際に、天明年間(1781~1789年)に平家の亡霊の目撃証言が残されているようです。
生息地は全国ですので雪女より遭遇率は高めですが、お盆か大晦日に海へ出ないと行けないのでいろいろと大変です。
『絵本百物語』では船幽霊に遭遇したら底を抜いたお椀を貸して、念仏を称えてやり過ごすという対処法が紹介されています。もし、遭遇したら、トライしてみましょう。
次に「蚊帳の前の幽霊」です。
明治、挿絵画家として有名だった鰭崎英朋(ひれざきえいほう)の作品です。
鰭崎さんは幽霊が出ると聞けば見に行くほど幽霊が好きだったと言われています。
そして最後に『返魂香之図(はんごんこうのず)』です。
江戸時代を代表する画家の一人・円山応挙(まるやまおうきょ)の作品です。
円山さんが描かれたこの幽霊画、諸説はありますが、「足のない幽霊の元祖」と言われています。
以上、今回の「衣装」というテーマで白装束・白い着物の幽霊画等をご紹介しました。
実は白装束・白い着物を衣装として紹介していいものか悩むところですが、現在も怖い話や怖いテレビなどで再現するときの幽霊役の方はたいていが白い着物で登場します。このように昔も今も白い着物、白という色に何らかの思いが無意識に込められているのだと感じました。
ところで、上記の雪女はちょっと怖さも感じますが、船幽霊の方はよく見ると笑っている幽霊もいて、何だかチャーミングにも見えます。鰭崎さんのは美しいですし、円山さんのはきれいですが少し怖い気もします。
思いがけず、幽霊画のご紹介になってしまいました。苦手な方には申し訳ありません。
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